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Research

2つの性を区別する配偶子細胞の空間構造

Spatial positioning of flagella(#1, #2), microtubular roots(1s,1d,2s,2d),eyespot and mating structure in green algal gamete

Gametes

Mating Gametes

Gamete fusion between the mating structures. Position of mating structure is different between male and female gametes

Male gamete

Female gamete

Sex specific cell surface structures of male and female gametes of Bryopsis maxima

​性特異的な配偶子細胞表層構造

 多くの真核生物は、2つの性をもっています。このような性は、究極的には配偶子の性であり、2つの配偶子の大きさに違いがない同形配偶子から、大きなメス配偶子と小さなオス配偶子をつくる異形配偶、卵生殖が進化してきたと考えられていますが、その過程については、オスとメス、2つの性の起源や進化など未解決の問題が多く残っています。われわれは、緑藻植物の配偶子の細胞構造に注目して、形態学的な視点から、この問題に取り組んでいます。

 一般的に、緑藻植物の配偶子は、2本の鞭毛(#1と#2)と光受容装置である眼点(eyespot)をもち、水中を光の方向に向かって遊泳します。また、細胞先端部近くの鞭毛基部には接合装置(mating structure)という細胞融合装置をもつことが多く、配偶子間の融合はこの部分から始まります。このような、眼点や接合装置は細胞の一定の場所に存在し、その配置は鞭毛の基部にある2個の基底小体から細胞後方に伸長した細胞骨格系である微小管性の鞭毛根(図中の1s, 1d, 2s, 2d)によって決められていると考えられています。

 主として、海産緑藻を使ったこれまでの研究から、アオサ藻綱の海藻や緑藻綱のChlamydomonas reinhardtiiの配偶子において、接合装置あるいは細胞融合部位が、2つの性で非対称的な場所にあることが、同形、異形配偶に関わらず、2つの性を形態的に区別する共通した特徴であることが分かってきました。すなわち、オス配偶子では鞭毛運動面に対して眼点と反対側に接合装置があり、メス配偶子では同じ側にあります。この結果として、細胞融合後、4本鞭毛の動接合子では、オスとメス由来の2つの眼点は細胞の同じ側に並び、一体となって機能していることが予想されます。もしも、この現象が普遍的ならば、同形配偶子といえども形態的に区別することができると考えられます。現在は、この現象の普遍性の確認とその分子レベルでの背景について研究しています。

 緑藻植物、特に海産緑藻では、異形化が進むと配偶子は、接合装置と眼点を失う傾向があります。例えば、海産緑藻オオハネモ(Bryopsis maxima)の雌雄配偶子は、2本の鞭毛をもち、水の中を泳ぎながら出会い受精します。メス配偶子には接合装置と眼点がありますが、オス配偶子にはどちらもありません。そのかわりにオス配偶子は特徴的な細胞表層構造をもっており、メス配偶子との接着や融合に関与していると考えられています。面白いことに、オス配偶子に特異的な細胞表層構造の多くは微小管性の鞭毛根や基底正体に付属した構造などに裏打ちされており、これらの細胞骨格系によって細胞内での場所が決まっていると考えられます。また、メス配偶子の細胞表層も顆粒状の構造で被われているなど、細胞の大きさ以外に明確なオスとメスの違いが認められます。

​ このような配偶子の細胞レベルで認められる現象の理解には、天然において、緑藻植物がどのようにして有性生殖を行っているのかを理解することが重要であると考えられます。そこで、茨城県大洗町の海岸において、オオハネモやナガアオサなどの潮間帯に生育するアオサ藻綱の海藻緑藻の有性生殖について調べています。

 

潮間帯に生育する海産緑藻の有性生殖

潮間帯に生育する海産緑藻は、大潮の干潮時に配偶子を放出する。放出された配偶子は、しばしば、タイドプールの表面に集まっている。

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